スピリッツのこと

スピリッツのこと

スピリッツとは一般的に蒸留したアルコール度数の高いお酒のことを指しますが、
言葉としては精神や魂などといった意味合いもあります。

今では単に一趣向品として扱われがちなお酒ですが、元来お酒は神々への信仰における祭祀にも度々登場してきたように、
人々はお酒に対してある種の尊崇の念、祈りを抱いてきました。

スピリッツにはその奥深くから醸し出す何か大きな魅力があります。
それは様々な国、地域に根付いた文化、そこで生きる人々の精神や習慣などが大きく影響を与えているからかもしれません。

そんなスピリッツも世界中にたくさんの種類が存在しますが、
その中でも世界4大スピリッツとしての地位を確立しているのが「ジン」「ラム」「テキーラ」「ウォッカ」です。

まずはこの4大スピリッツの違いなどについて、基本的な概念を紹介しておきたいと思います。

GIN – ジンについて

ジンといえば一般的に思い浮かぶのはやはりジントニックではないでしょうか?
オーセンティックなBARはもちろん、レストランから居酒屋まで幅広くメニューに浸透しているカクテルですね。
もしかするとBARに通い慣れていればマティーニ、小説好きならギムレットといったカクテルを思い浮かべる人もいるかもしれません。

今ではカクテルの主材料としての地位を確立しているジンというお酒。
しかしその歴史は非常に古く11世紀まで遡れると言われています。現在のようなスタイルは17世紀のオランダがその起源とされ、解熱酒、薬用酒としてなどお薬の役割を果たしていたそうです。
それもそのはず、ジンの独特の香りの素はジュニパーベリーと呼ばれるネズの実で、その他にもとっても体に良さそうな様々なボタニカルが用いられているのです。

そんなジンにもいくつかの種類があってそれぞれ原料やつくり方も異なり、それにより香りや味わいにも違いがあって楽しみ方もいろいろ。
ただ共通する、あるいは定義とも言えるのがジュニパーベリーを必ず使うということになります。

ジュニパーベリー
ジンの香りづけに欠かせないジュニパーベリー

●主な分類 (分類 / 地域 / 特徴)

ドライジン イギリス・ロンドン 大麦麦芽、トウモロコシなどの穀物を原料を発酵させ連続式蒸留器で作られたスピリッツに、ボタニカルを加えて単式蒸留器で再蒸留。
雑味のないスッキリとした味わいにボタニカルの爽やかな香りが特徴。
ジュネヴァ(イェネーバ) オランダ 大麦麦芽、トウモロコシなどの穀物、特に多めの麦芽を原料に発酵させボタニカルを加え単式蒸留器で蒸留。ボタニカルを加えた再蒸留も単式蒸留器で行う。
麦芽の香りと単式蒸留由来の濃厚な香味が特徴。
シュタインヘーガー ドイツ ジュニパーベリー自体を発酵、単式蒸留器で蒸留させ、そこに連続式蒸留器で作られた穀物主体のスピリッツを加えて再蒸留。
ドライジンより控えめな風味、マイルドな口当たりが特徴。
ジンベースのマティーニ
カクテルの王様マティーニはジンベースの代表格

RUM – ラムについて

スイーツの風味付けやラムレーズンでも親しみがあるラム酒。
ほんのりとした甘さの漂う香り豊かなラムの原料はサトウキビで、砂糖を製造する際にできる廃糖蜜を使用しています。

カリブ海の島々が発祥とされますがもともとサトウキビはこの一帯に自生しておらず、大航海時代のコロンブスが持ち込んだと言われています。
華やかで陽気なイメージのラムですが、その発展にはヨーロッパの植民地政策、黒人奴隷制といった暗い歴史的な背景が大きく影響を与えていました。

しかし近代に入り特に1970年代以降はカクテル文化の世界的広がりと共に、ラムも華やかな表舞台で活躍するようになりました。

ラムベースのカクテルと言えばやはりダイキリでしょう。
キリっとひきしまるショートカクテルに始まり、文豪ヘミングウェイも愛したフローズンダイキリ。
さらにココナッツミルクを使ったピニャコラ-ダや、ミントをふんだんに使用したモヒートなど、ラムは爽やかで陽気なトロピカルなカクテルを多く生みだしてきました。

そんなラムも実はいくつもの分類が可能で、そのこともこのスピリッツの魅力をより大きくしてる要因と言えるでしょう。

ダークラム
熟成された芳醇かつ濃厚なダークラムは美味

●色による分類 (分類 / 色 / 特徴)

ホワイトラム 透明 活性炭濾過によりスッキリとした味わい。シルバーラムとも呼ばれる。
ゴールドラム 薄い褐色 樽熟成※着色やブレンドする場合もあり。中間的なほんのりとした香味。
ダークラム 濃い褐色 樽熟成※着色する場合もあり。豊かな香り。お菓子の香りづけにも使われる。
サトウキビ畑
ラムの原料となるサトウキビの栽培畑

●風味による分類 (分類 / 風味 / 特徴)

ライトラム 軽快な風味 主に連続式蒸留器で蒸留。貯蔵タンクや内側を焦がさない樽で熟成。
ミディアムラム ややまろやかな風味 単式、連続式蒸留器など様々。ライトとヘビーの個性を生かした仕上がり。
ヘビーラム 芳醇な風味 主に単式蒸留器で蒸留。内側を焦がした樽で3年以上熟成。
ラムベースのピニャコラーダ
有名なトロピカルカクテルの多くはラムベース

TEQUILA – テキーラについて

テキーラと言えばやはりメキシコ、そして長いツバの帽子をかぶったメキシカンや
サボテンのある荒野の風景を思い浮かべますよね。

中にはサボテンのお酒だと思ってる方もいるかもしれません。
正確にはサボテンではなくアガベと呼ばれるリュウゼツラン科の植物の茎が原料となります。
見た目は大きなアロエに近いかもしれません。

テキーラの名前の由来はその名産地でもあるハリスコ州の町サンティアゴ・デ・テキーラ。
その誕生は、スペインから蒸留技術が伝わり古代から作られていたリュウゼツランを醸造したお酒ブルケを蒸留してできたとされる説や、山火事により燃えたリュウゼツランから甘い香りと味がしたことから発酵、蒸留させた説などがあり、こうしてできたメスカルと呼ばれるスピリッツがその始まりとされます。
今でもテキーラは広義にはメスカルと呼ばれ、その中でもテキーラは特定地域の栽培、蒸留の基準を満たされた特別な呼称というわけです。

そんなどちらかというとローカルなお酒でしかなかったテキーラを世界に知らしめたのはやはりカクテルの大流行で、全米カクテルコンテストで入選したマルガリータがその火付け役と言っても過言ではありません。
もともと塩やライムとともにストレートで飲むスタイルが主流のテキーラですが、スノースタイルと呼ばれるグラスのふちに塩を付けたこのマルガリータカクテルは今でも世界中で愛されています。

マルガリータ
キレのいいスッキリとした味わいが人気のマルガリータ

●主な分類 (分類 / 特徴)

メスカル リュウゼツランから造られるお酒の総称。メキシコ公式規格(NOM)をクリアするには指定された品種を主原料とする事が義務づけられている。
テキーラ 原料の品種はアガベ・アスール・テキラーナを51%以上使用、テキーラ村周辺地域で蒸留など、テキーラ規制委員会(CRT)の定める産地、原料、製法の基準をクリアしなければいけない。単式蒸留器で2回以上蒸留する。
テキーラ100%アガベ テキーラの基準に加え、副原料を用いず100%アガベを原料としたプレミアムテキーラ。
サトウキビ畑
テキーラの原料となるアガベ畑の景観

●熟成による分類 (分類 / 特徴)

ブランコ(シルバー) 製造されすぐに瓶詰めテキーラの風味がよりはっきり出てる。
ゴールド ブランコに熟成されたものをブレンド。若干まろやかな風味と口当たりになる。
レポサド 2ヶ月から1年未満の樽熟成。樽の香りを含んだまろやかな香味。
アネホ 1年以上樽熟成。ウイスキーのように樽の影響を受けた風味。
エクストラ・アネホ 3年ほど樽熟成。芳醇な風味の最高級テキーラ。
ゴールドテキーラ
塩とライムとゴールドテキーラも定番

VODKA – ウォッカについて

ロシアを中心とした寒い国で造られる物凄く強いお酒というイメージのウォッカ。
実際にもその通りですが、一部強烈なアルコール度数を持つ銘柄はあるものの、
他のスピリッツ(ジンやテキーラ、ウイスキーなど)も変わらず十分にアルコール度数は高かったりします。

しかしそれら他のスピリッツと決定的にウォッカが異なる点は、非常に無味無臭で無色といったところでしょう。

実際には香り付けしたウォッカも存在するものの、べーシックなウォッカは
その性格から多くのカクテルベースとして活躍してきました。
但し、ロシアやその周辺国ではストレートで飲み干すというのが一般的だそうで、
そのせいで寿命が短いなんて話もあるほど。

そんなウォッカも世界的にみればカクテルのベースとしてカクテル文化へ大きな役割を果たしてきたスピリッツと言えます。
オレンジジュースで割るスクリュードライバーや、グラスのふちに塩を付けてグレープフルーツで割るソルティドッグは余りにも有名ですね。
それと映画007に登場するジェームズ・ボンドの愛したウォッカ・マティーニもその象徴的なカクテルと言えます。

ウォッカの起源は12世紀まで遡れると言われますが、現在のようなライ麦など穀物を原材料とし、
蒸留後、白樺の炭で濾過するという形ができたのは18世紀以降のようです。

その後、20世紀初頭のロシア革命の影響による亡命者がフランスやアメリカでウォッカを製造し、
特にアメリカを中心に世界にその地位を確立させていきました。

ブラッディメアリー
トマトジュースを使ったブラッディマリーもファンが多い
冷えたウォッカ
キンキンに冷えたウォッカは格別

●地域による分類(地域 / 特徴)

ロシア 主に小麦が多い。無味無臭に近いニュートラルタイプから香草で香りづけしたものまで様々。
ポーランド 主にライ麦が多い。世界第2位のライ麦生産国らしくライ麦の風味を残したウォッカが特徴。
フィンランド 主に大麦が多い。スムーズでライトでありながら穀物由来の風味を残している。
アメリカ・カナダ 主にトウモロコシが多い。高い度数のグレーンスピリッツと強い活性炭濾過によりドライでクリアな仕上がり。
麦畑
ウォッカの多くは麦類などの穀物を使用