
映画とお酒
お酒は私たちの日々の生活の中で、あるいは人生という大きな道のりの中で、時として重要な役割を果たし、忘れられない思い出のワンシーンとして登場します。
それは人生の大きな転機であったり、ちょっとした些細な出来事だったりと、喜怒哀楽さまざま感情とともに訪れます。
そのような出来事や感情を非常に上手に描写しているのが映画です。映画においてもお酒は登場人物の繊細な感情を描くために所々で用いられています。
そのシーンのイメージに合わせて登場するお酒の種類も工夫されていて、お酒を知ることで作品をより深く理解することができますので、そのようなシーンをご紹介したいと思います。
#0003『イエスタデイ』
『イエスタデイ』』(2019年公開/イギリス)
脚本:リチャード・カーティス
主演:ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、エド・シーラン
スーパーでアルバイトをしながらシンガーソングライターとして活動するイギリス人ジャック(ヒメーシュ・パテル)。まったく売れないジャックをマネージャーとして支えるのは、学生時代からの親友エリー(リリー・ジェームズ)。ある日世界規模で12秒間の停電が発生。その時自転車に乗っていたジャックはバスとの衝突事故を起こしてしまう。そして病院から退院したジャックを待っていたのは、伝説のロックバンド「ビートルズ」がこの世に存在しない世界でした。唯一、ビートルズの名曲の数々を覚えていたジャックは、瞬く間にスターへとなっていくが・・・。
序盤の心に残るシーンはなんと言っても、ジャックの退院祝いでビールやワインを飲み交わす友人達との海辺のテラスシーン。プレゼントされたギターでジャックが弾いたのは名曲「イエスタデイ」。
ビートルズが存在しない世界で初めて弾かれる「イエスタデイ」は、日頃なにかとジャックをからかう友人達も、その美しいメロディを奏でるジャックに驚き言葉を失います。観てるこちらも「イエスタデイ」の秀逸ぶりに改めて感動します。
その後、スターへの道を歩み出すジャックをよそ目に、長年ジャックへの想いを募らせてきたエリー。しかし二人の間はぎくしゃくしていく。そして、ビートルズの故郷リヴァプールを訪れたジャックはエリーと再会。そしてホテルで過ごすシーンで二人が飲むのはいくつかのスピリッツのミニチュアボトル。
本作は監督に「シャロウ・グレイブ」「トレインスポッティング」のダニー・ボイル、脚本には「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティスという、イギリス映画の名作を作り上げてきた二人が組んだ注目作でもありました。
さらに、イギリスを代表するミュージシャン「エド・シーラン」が本人役を自身が務め、ストーリーの重要な役割を果たしているのも見応えがありました。そして、物語の中にはビートルズに詳しい方なら気づくであろうネタも所々に散りばめられていて、わからないところは見終わった後に検索しました(笑)。
もちろん所々でビートルズの名曲が流れるわけですが、どの曲もおそらくファンならずとも誰もが聞いたことのある名曲ばかりで、改めてビートルズの偉大さを再認識できます。終盤にはまさかのあの方も登場して感慨深くなりました。全体としてはコメディ要素もあって、とにかく楽しく観れる作品となっていますので、気軽に見れる作品としてお薦めです!
#0002 『ナイト&デイ』
『ナイト&デイ』(2010年公開/アメリカ)
脚本:パトリック・オニール
主演:トム・クルーズ、キャメロン・ディアス
妹の結婚式に向かうため空港にいたジューン・ヘイヴンス(キャメロン・ディアス)は、ひょんなことからロビーで偶然に出会ったハンサムな理想の男性ロイ・ミラー(トム・クルーズ)といいムードに。しかしその出会いはCIAの諜報員であるロイが仕組んだものでした。永久エネルギーと言われる新開発の電池「ゼファー」に絡む者たちと戦うロイに起こるアクシデントに、次々と巻き込まれていくジューン・・・。
機内でロイの近くに座ったジューンがオーダーしたのは「テキーラ」。ミニボトルに入ったゴールド色のテキーラを、スライスライムが添えられたカップに注ぐジェーン。このあとに起きるトンデモないトラブルなど予想だにせず、彼との会話を楽しむための景気付けといったところでしょうか?
諜報員として緊迫した状況に置かれているロイとの比較で、大きなギャップを感じさせる演出にテキーラが使われていました。
ハーベイ・ウォールバンガーは、ウォッカを注いだグラスにオレンジジュースで満たし、最後にアニス、ラベンダー、ペパーミント、バニラなどを配合されたイタリアの薬草系リキュール「ガリアーノ」を浮かべたもの。カクテル名の由来は諸説ありますが、おおむね共通しているのはハーベイという人物が酔って壁にぶつかったというもの。
映画の中では、この男はあるものにぶつかって悲惨な最期を遂げます。このカクテルをオーダーしたことがそのフラグであったかはわかりませんが、おそらく意図的だったと思っています(笑)
豪華二大スターの共演ということもあって、さすがに各シーンに華がありました。スパイアクションといっても、ほとんどのシーンで小さな笑いが入ってコメディに近い作品で、難しく考えずに楽しみたいときにお薦めの映画でした!
今回知ったのは、キャメロン・ディアスって女優引退宣言していたんですね。今年、第1子を誕生したそうです。お幸せに!
#0001 『食べて、祈って、恋をして』
『食べて、祈って、恋をして』(2010年公開/アメリカ)
脚本:ライアン・マーフィー、ジェニファー・ソールト
主演:ジュリア・ロバーツ
主人公の女性(ジュリア・ロバーツ)は、夫とのすれ違いや将来への考え方の違いで結婚生活に行き詰まりを感じていました。そんな中、ヨガを通して神様の存在を意識し始め、自分自身を見つめ直し始めていました。そして遂に離婚を決意し、自分探しの旅に出ます。
ローマ、インド、バリへと旅する中で、多くの人と出会い恋をし、その国の料理や文化に触れ、そして祈りを捧げていく中で、本当の自分や人生に大切なものを見つけていく物語です。
ローマに着いた主人公はカフェで知り合った女友達とその家族や仲間と溶け込んでいきます。
イタリア語を習い始めていた主人公はある日、皆とのランチでの食事のオーダーをする場面で、自分がオーダーをすると名乗り出ます。
そして見事にイタリア語で料理のメニューを、それも最高のチョイスでオーダーしてみせます。
その時に頼んだお酒はジェンザーノのハウスワイン。
ジェンザーノ(又はジェンツァーノ/Genzano)はローマ南東部の町で、花祭り、パン、そしてワインの名産地だそうです。
ハウスワインとはそのお店おすすめの看板ワインのこと。手ごろな価格なのはもちろんですが、だからと言って美味しくなればならず、そのためお店のセンスが伺えるワインです。
映画では美味しそうな料理たちと一緒に、かわいい形状のデキャンタで運ばれていました。
そして終盤で登場するのはテキーラ。バリに着いた主人公は現地で知り合ったブラジル人女性にパーティに誘われ、バーカウンターでテキーラをオーダー。
ライムをたくさん絞ってとさらに注文をつけます。そのあとはストレートのテキーラを何杯も!
そしてそのパーティーで、以前とある事故で知り合った男性と偶然に再会して・・・。
様々な経験をしてきた一人の大人の女性が、外国での出会いや別れ、文化や信仰と触れ合う中で心変わりしていく様を絶妙に描いた素敵なお話でした。