故郷への想いも大切にしながら、たゆみない努力を続ける女性バーテンダーが手掛けるバー「アルジャーノン・シンフォニア」。

世界中から、ビジネス、遊びと多くの人が集まってくるエリアでもある東京・赤坂に、女性バーテンダーが手掛けるオーセンティックバー「アルジャーノン・シンフォニア」があります。こちらのオーナーである小栗絵里加氏は、シガーバーなどの複数のバーで修行をされてから現在のバーで独立し、日々バーテンダーとして活躍されています。その間、お酒についての知識を深め、技術を磨き、接客についての経験を重ねてきたそうで、現在では「ソムリエ」「テキーラマエストロ」「ベネンシアドール」「シガーソムリエ」といった様々な資格も有するほどです。そういった努力も同氏は「好きだからできた」といいます。






── たくさんの資格をお持ちですが、相当に大変だったのではないでしょうか?どういった経緯があったのでしょうか?
小栗氏「そうですね、本当に大変でした。私は子供の頃から勉強はとても苦手だったのですが、好きなことなら人間できるんだなと思いました(笑)。最初はテキーラやメキシコ文化の魅力に惹かれてテキーラマエストロを取得しました。それからメキシコが歴史的にスペインとの繋がりがあることも知っていくうちに、スペインのお酒シェリー(スペインの酒精強化ワイン)も勉強したくなったのです。そうなってくるとその前にワインを勉強しないとと思い、それならソムリエの資格も取得しようと思ったわけです。私はワインは苦手だったのですが、お陰でその苦手克服のいい機会にもなりました。」
── テキーラのイベントにも参加されていますね?
小栗氏「テキーラマエストロを取得した時から、様々なイベントに呼んでいただけるようになりました。いろいろな方と出会えるのがとても楽しいですね。毎回バーカウンターに立ってカクテルを提供しているのですが、いろいろなお客様のたくさんの感想を伺える貴重な時間となっています。」
── お店でもテキーラをお勧めしたりしますか?
小栗氏「お客様の好みを聞いた上でになりますが、もちろんお勧めしますよ。テキーラは”苦手”ではなく”苦手意識”を持つ方が多いです。まだまだそういう「印象」を持つ方が多いようです。でも実はウイスキーの様にゆっくりと味わって楽しめるお酒なんだと、もっと知って欲しいですね。
当店はプレミアムテキーラのような値段が高いお酒も、比較的カジュアルな値段で提供させていただいておりますので、スピリッツ全般いろいろ楽しみたいという方にはそういう特別な銘柄をお勧めしたりします。あとは、例えばジンの中でも少しベジーな(野菜っぽい)感じが強いものを好む人がいれば、同じようなベジーな特徴を持つテキーラを薦めてみたりしますね。」
── テキーラと相性の良いおつまみがあったりもしますか?
小栗氏「例えばしっかり熟成されたアネホのテキーラであれば生チョコとか。さっぱりしたブランコのテキーラであればサケトバがとても相性が良いです。」
── サケトバ?
小栗氏「鮭の半身を干したもので北海道の名物です。私は北海道の出身でして、当店でも帯広風の豚丼や北海道産のハードスモークベーコンなど、北海道フードも提供しているんです。」
── シガーの資格もお持ちですが、テキーラとシガーも合わせたりするものですか?
小栗氏「もちろん合わせる方もたくさんいらっしゃいます。例えば、しっかり熟成されたプレミアムテキーラなどにはアガベの甘みがあります。それはウイスキーやラムの甘みとはまた違う甘みですが、そういった甘いニュアンスのある樽香の利いたテキーラはシガーとの相性がとても良いです。逆に、夏はさっぱりとした熟成されてないブランコのテキーラに、甘みのきいたシガーと合わせたり、好みにもよりますがあえて辛口のシガーと合わせたりすることもできます。テキーラに限りませんが、それぞれのお酒の特徴とシガーの特徴を踏まえて、これとこれは合うとか好きな組み合わせを見つけるのがシガーの楽しみ方でもあります。」
── 2017年の東京インターナショナルバーショー「なでしこカップ」で優勝されていますね?
小栗氏「とてもいい経験になりました。賞を頂いてから様々なお仕事をいただけたりして色々な意味で転機になりましたし、大勢の前で演技することで度胸もついたり(笑)。本当に感謝しております。」



その時に考案された優勝カクテル「マザーズ・ブロッサム」をいただくことができました。大会の当日が母の日だったことから構想が思いついたそうで、オランダ産のジン「ボビーズ」をベースに、花言葉が「思いやり」のエルダーフラワーのリキュール、故郷を思う北海道産のハスカップという果物のシロップ、優しい風味のバニラビターズなどを加えた作品。香りはエルダーフラワーやバニラ由来の華やかさと甘さが優しく漂い、味は甘みと酸味のバランスが非常に心地良くしっかりしていて、母を想う娘の心情が伝わってくる逸品だと思いました。
── 最後に・・お店に初めてお越しになる方や、飲みなれない方などに一言お願いします。
小栗氏「なにも緊張される必要はありませんのでお気軽にお越しください。わからないことがあれば気兼ねなく相談していただければと思います。」
日本の中心と言っても過言ではないこの場所で、故郷への想いも大切にしながら、常に向上心を持って勉強熱心に取り組む姿勢に感銘を受けました。同氏は国内のクラフトジンのプロデュースもされているそうで、この夏には沖縄の泡盛酒造メーカー「まさひろ酒造」さんからリリースされたクラフトジン「まさひろオキナワジン バーテンダーズバッチ2019」をプロデュース。使用されるボタニカルを吟味し選定したり、蒸留されたスピリッツをテイスティング、調合したりするなどされたそうです。こういった活動はこの先も予定されているそうで、同氏の今後の活躍に期待したいですね。
